工賃向上に関するアンケートで、「課題は何ですか」と聞くと、必ずといってよいほど
「販路開拓」が上位に入ってきます。
そうなんだ、いまだ事業所ではここが一番の課題なんだなと思っていました。
が、現場にうかがう際に感じていたのは、「コトはそう単純でもない」ということです。
もちろん、自主製品の新たな販路や受注作業の新規開拓は重要課題ではあると思うのですが、
「量が作れない」とか、「今の仕事で手一杯」とか、そもそも「工賃を上げる気になってない」あたりに問題がある、とか、課題は多岐にわたります。
そんな時、雑誌のある記事を読んで気づきました。
企業の人事部を対象にしたアンケートでは、「採用したい人材は?」と聞くと、
いつもトップに「コミュニケーション力」が挙がる。
しかしながら、「コミュニケーション力」は大事だけれど、それだけで採用する
わけはもちろんない。
数ある要素のうちの一つにコミュニケーション力が入るだけだというのです。
これは、アンケート、統計のマジックであると。
つまり、複数回答で、「○はいくつでも」とか、「上位3つまで選んでください」という聞き方をすると、唯一でも一番でもないけど、○をつけたくなる項目ってあるよね、ということです。
「工賃向上の課題は何ですか?」と聞かれたら、計画づくりもリーダーシップも重要と思いつつ、選択肢に「販路開拓」とあったら、「そうそう、販路開拓は大事だよね」ととりあえず○をつけたくなってしまう(しかも、自主製品・受注に関わらず)。
結果、課題として最も多いのは「販路開拓」になるということです。
そして、いつの間にかそれが「最重要課題」であるかのように考えてしまいます。
記事は続きます。
アンケートでトップの「コミュニケーション力」をアピールするために、「学生時代に、飲食店でバイトして、コミュニケーション力を磨きました」なんて薄っぺらい自己PRをしても、就職戦線は勝ち抜けないのだ、と。
データが示すことは一つの真実。
けれど、そこから何を読み取るかがより重要であって、短絡的な見方で、「それが事業所の課題だ」ととらえ、それにフォーカスした課題に取り組むだけでは不十分ということです。
事業所も自治体も、今何をすべきか、最も効果の上がることは何か、を表面的でなくじっくり考え、行動することが重要なのではないでしょうか。
ちなみに、昨年度弊社が担当した工賃向上計画調査では、「工賃向上の課題は何ですか」とは
聞いていません。
不用意に複数回答の設問も用意していません。
3,000件を超える回答事業所のデータを丹念に分析した結果、課題ではなく、何が効果的か、
を導き出していますので、是非ご覧ください。
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