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受注作業で平均工賃7万円

by inayamablog, 2015年11月10日

東京都の工賃アップセミナー事業。今年は、視察研修があります。
今回の見学先は、社会福祉法人武蔵野千川福祉会の2つの事業所です。

challenger_gaikan facebook_sekimae

(左がチャレンジャーの外観、右がワークイン関前の作業風景)

「チャレンジャー」という事業所名を聞いたら、あ!と思いあたる方も
多いのではないでしょうか。
受講者は、「工賃を上げたい」と強い思いで参加している13名です。
チャレンジャーの平均工賃は77,679円(26年度)。
作業の様子をみて、皆さんがまず驚くのは、全員立って仕事をしていること。
手を止めている利用者はいません。
自分の仕事もわかっているし、職員も次々仕事を割り振っています。

けれど、だからと言って、利用者が普通の事業所の何倍もの速度で
紙を折ったり、封入したりしているわけではありません。

では、どうしてそんなに高い売上、高い生産性、高い工賃が実現できているのか?
新堂常務理事の話を聞いて、改めて納得しました。

ポイントは3つ。

1.方針・目標を明確化

高工賃を目指すきっかけになったのは、無認可の作業所時代、市内に立派な施設ができて利用者が移ってしまったこと。特徴を打ち出し魅力的な作業所にしなければ、利用者に来てもらえないと思い、考えて決めた方針が「高工賃」でした。営業し、仕事を増やし、就労意欲を引き出す支援に特化して取り組んだことが、今につながっています。作業時間を17:00までに延ばし、行事やレクリエーションも絞り込みました。最初は反対意見ありましたが、工賃が3万円以上になった頃から、不満は出なくなりました。

2.生産性を上げるための絶え間ない工夫

日々、職員間で工夫し、どうすればもっとたくさんの作業をこなせるかを話し合うと、意見が分かれることもありました。「勘や経験でなく、理論的な裏づけをもって、現場を改善したい。」新堂さんはそう思って本屋で生産管理の本を買い、通信教育でIE(industrial engineering)の講座も受講したとのこと。理論を現場で実践し、手ごたえを得ます。機械化も進めました。今も、大学の先生に指導を受けながら、生産性向上を追求しています。

3.高単価の取引先に絞り込めるまで実績を積上げる

チャレンジャーの作業単価は高い。なぜなら、二次請け、三次請けの下請け仕事はやらず、プロのDM発送業者として、直接企業とやりとりするからです。
「最初からそういう取引ができたわけではない。最近までは、下請けの安い仕事もやっていた。印刷業者やDM業者には、機械のことや効率よい作業の仕方などを教えてもらえたので感謝している。今は、自分たちが業者より少しだけ安い見積を出すことによって、企業から喜んで発注してもらっている。口コミ、紹介で取引先も増えた。」

淡々と語る新堂さんの説明は明快。「高単価」の仕事は、待っていてやってくるものではない。実績でつかむものなのですね。
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(質疑応答の様子)

チャレンジャーは、軽度の方ばかりなんでしょう?
ここまで読んでそう思っている方も多いと思います。

確かに、武蔵野千川福祉会は「機能分化」という考え方で、「バリバリ働きたい方」「マイペースで働きたい方」など働く意欲や希望する働き方に応じて、5つの就労系事業所の就労環境に変化をつけています。

そういう意味で、チャレンジャーは最もバリバリ働きたい方の集団です。
では、もう1つの見学先「ワークイン関前」はというと・・

「コミュニケーションに課題があり、個別に声かけも必要な、ややマイペースに働く利用者の多い事業所」
のように見えます。帳合機のガシャンガシャンという大きな音に紛れて、鼻歌を歌いながら作業する人、
自分の得意な作業が来るのを待っている人、「両手を使って作業しましょう」と声をかけられている人などさまざまです。

5つのB型事業所のうち、工賃は3番目に高い40,277円(26年度)。
“できる”利用者ばかりを集めて得られた実績だと言えますでしょうか?

 

長くなりました。

自事業所雄の現状の工賃を、4万円、7万円まで引き上げるなんて絶対無理。
そう思っていたであろう受講者の皆さん。
活発な質問、食い入るように話を聞く姿勢に、“奮起のエネルギー”を感じました。

さあ、一歩前へ!ですね。