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楕円時間

by inayamablog, 2017年3月20日

映画監督の是枝裕和監督が、ある本の中で
使っていた言葉です。
「楕円時間」。
「是枝さんの作品は1年間を描いたものが多いですね。」という
投げかけに対する回答でした。 

時間は直線的に流れていくのではなく、
季節を追って、1周して、ちょっと違うところに
着地する。それを楕円時間と言っている。

去年の桜と今年の桜は、1年分、歳をとって出会う桜だし、
その見方も去年とは少し違っている。
同じところには着地しない。 

次元の違う文学的、哲学的な話なのだろうなあと
思いながら、そのくだりを読んで、
「そうか、事業所の事業報告書も、PDCAで振り返るときも
楕円時間で同じところに着地しちゃいけないんだなあ」と
思ったのです。 

コンサルティングに入らせていただくとき、最初に
その事業所の事業報告書、事業計画書を拝見します。
その事業所について、まずは勉強させていただくためです。
できれば2年分の報告書を、とお願いします。 

2年分を見たときに、報告書のフォームが同じでも、
楕円時間で、らせん状に変化していると感じるところと、
同じ円をなぞっているように感じるところがあったなあ・・
「楕円時間」という言葉にインスピレーションを得て、
そんなことに気づいたのです。

今までは、事業報告書の書き方とか書きぶりの違いなのかなと
思っていました。
いや、そうではなくて、基本、同じ円を描くことを良しとする事業所か、
1年1年違う着地を志向する事業所か、スタンスの違いが
事業報告書にも表われていたのかもしれません。 

PDCAについては、「C(check)」から「A(action)」に移る時に、
よいしょっと掛け声かけて階段を一段上るように、「改善へつなげる」と
いうイメージをなんとなく持っていましたが、
そもそもCの段階で、計画ときと同じステージに
いると思っちゃいけないんです。

やってみてわかること、リアルな現実は、同心円上で評価される
ものではなく、計画時に想像した着地点以上に、多様な変化が
生まれているはずなのです。私たちは、それに気づかなければいけません。

自分たちが去年とは違うポジションにいる前提で、多様な視点から
物事を振り返ることができれば、次の改善アクションも自ずと見えて、
スムーズに移行できるのではないでしょうか。 

去年の利用者と今年の利用者、去年の職員と今年の職員、去年のお客様と
今年のお客様は違っています。
「安定した同じ着地点」はそもそもないのですから、多様な確度で
変化を教えてくれる存在をうまく捉えて、良い方向に導きたいですね。