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つたえる、つたえる。

「つたえる、つたえる。」を読んで想うこと

by inayamablog, 2017年4月30日

棕櫚亭の30周年記念誌「つたえる、つたえる。」を拝読しました。
30年前の精神障害の方たちの状況は、胸がぎゅっと締め付けられる
ように厳しいものだったことを改めて知りました。
時代を切り開き、国立に共同作業所を作り、突っ走ってこられた
天野聖子前理事長はじめ、開拓者の皆さんのご苦労はいかばかりだったかと
頭が下がるばかりです。

利用者の皆さんも含めて、すさまじくも血の通った温かな日々の積み重ねの
様子がモノクロ写真やイラスト、つづられた皆さんの言葉にあふれています。 

「作業所を地域の開放病棟にしてはいけない」
「“くもりのちはれ”はつまらなさの極地、“はれのちくもり”に
表現される程度の不吉さをおかしみに転化して楽しみませんか」
じんわり心に響きます。 

イナヤマは「棕櫚亭といえば、就労支援」という時代になってから、
取材のためにお邪魔したのがご縁でした。
就労支援の考え方やプログラムについて教えていただいたことが
ついこの間のことのようですが、あれからもう10年経ったのですね。
厚労省の調査報告書(ピンクのチェック柄に魔女がほうきに乗って
飛んでいる印象的な表紙の冊子)も何度となく参考にしました。 

「非常識すれすれの女たちが思いだけで突っ走った」なんて、書いて
いらっしゃいますが、棕櫚亭のすごいところは、時代を見据え、
自分たちを客観視し、満足することなく、「今、何をすべきか」を
考え続け、進化していることだと思います。 

天野理事長は、30周年を経て、この春退任されたとのこと。
作業所を立上げ、時代の波に翻弄されながらも、強い信念で日本の
就労支援の礎を築いてきた方たちが、第一線を退き、次世代にバトンを
渡しはじめています。
パイオニアの皆さんの生き様を見せていただき、話を聞かせて
いただいていることは、私たちの何よりの財産です。
大先輩たちのエネルギーには圧倒されるばかりでしたが、
皆さんから直接聞いた「大事なスピリット」を若い皆さんに
つないでいく役目、次世代にバトンがスムーズに渡るように
お手伝いすることも、僭越ながら私たちの仕事なのかもしれません。
一つ一つの出会いに感謝し、大事に言葉をつないでいけたらと思います。